「おねがいしまーす!」という明るい声と共に、スタジオのフロアに登場した藤原さくらさん。その可憐ないでたちに「あら、カワイイ!」「顔、ちっちゃいね、手のひらサイズ?」とスタッフたちが思わず声をかけると、藤原さんも「えへへ」と照れ臭そうににっこり。今回、劇団☆新感線には初参加の藤原さん、<静歌>という役は“歌うたい”という役回りではあるものの、今日のヴィジュアル撮影では楽器も持たないので歌い手の要素はあまりなく、ただただキュートな着物姿。“姫カット”のようなヘアスタイルも、ふだんの藤原さんとはまったく違うイメージで新鮮です。
カメラの前に立ってバランスを見ると、ちょっと帯の位置が高めだったため、衣裳スタッフがその場でギュッと下げて、調整します。「よいしょ!」と下げる衣裳さんに、ニコッと微笑む藤原さん。「なんだか瞳がキラッキラしてるよね!」と、ますますスタジオ内のテンションは上がる一方。
アートディレクターの東學さんがモニターで部分的にアップにしてみたりしながら全体をチェックした結果、口紅の色を、より濃いめの赤に変更することに。その場にメイク担当スタッフが口紅を持参し、藤原さんは目を閉じて口紅を塗ってもらっています。
やがて準備が整うと、撮影開始。東さんはまず「ハイ、真顔で!」と表情を指示し、その後も「もうちょっと顎をひいて」「だんだん、微笑んでいって」など、細かくリクエストを出していきます。じわーっと少しずつ笑顔になっていく藤原さんに「かーわいいっ!」と、またあちこちから声が上がります。
襟の合わせの位置をきっちりセンターにくるようにし、頭の位置もまっすぐになるようにモニターでチェック。ちょっと油断するとすぐ首が斜めになってしまうようで「ほら、首がまた傾げてきてるよ」と言われると、無意識だということもあって藤原さん自身はちょっと困り顔。そこでカメラマンの渞( さんずいに首=みなもと )忠之さんが「まっすぐ立つって、意外に難しいんだよね。でも、ちゃんと指示するから大丈夫!」と心強い言葉をかけると、「ハイ!」と元気よくお返事。
照明を直すちょっとした合間にはBGMの音楽のリズムに合わせて身体を揺らしてみたり、キュッと目を閉じてみたり、撮影レポート用のカメラを見つけてこっそりピースサインを送ってみたり。徐々に緊張もほどけてきている様子です。
後半には「じゃ、次はもっと優しい表情で撮ろうか」と注文が入り、「ハイ、やさしーく」「お、ええね、かわいいぞ!」などの声に混じって、やはりまたしても「ほら、首が倒れてきたー」と指摘されてしまい、柔らかい笑顔と苦笑いとを交互に見せてしまう藤原さんなのでした。
撮影終了後、劇団☆新感線には初参加、しかもなんとこの作品が記念すべき初舞台にあたる藤原さんに、作品への想いや意気込みを語っていただきました。
――まずは今日の撮影の感想から聞かせていただけますか。
今回、どういう衣裳でどういうメイクなのかが今日ここに来て初めてわかったので、静歌という女の子はこういう子なんだというのが少しだけわかったような気がしました。だけど、正面を向くというのが意外にすごく難しくて。
――苦労されていましたね(笑)。
ふふ。正面ってどこなんだろう?って悩みました(笑)。
――ふだん意識したことないですよね、真正面って言われても。
ないですねえ(笑)。どうやら私、片方の肩が下がってるみたいで。「いつもギターを持ってるから下がってるのかな?」と言われました。
――こういう和装で写真を撮られるのも。
もう、すべてが初めてです。仕事以外でも、成人式の時に振袖で写真撮影して以来かもしれません。
――初めてのことばかりですね。劇団☆新感線にも初参加ですし。出演オファーがあった時は、どう思われましたか。
最初、お話を聞いた時にはものすごくビックリしました。演技をやったことはあるといっても、本当に少しだけですし。もともと声を張り上げて歌うタイプでもないので、自分が舞台の上でお芝居をして歌を歌うだなんて、どういうことになるのか全然想像がつかなかったんですけど。だけどものすごく面白そうだなと思ったんですよね。私自身も、新感線の舞台は何度も観たことがありますし。
――そうだったんですか?
はい。『髑髏城の七人』は2回観ました。福士蒼汰さんが出ていた“Season月”<上弦の月>と、天海祐希さんが出ていた『修羅天魔~Season極』。そのあと『メタルマクベス』を観て。もちろん今回は客席が360度回転するわけではないですけれども、え?自分もこの舞台に出るんだ?と思いながら観てしまって。もちろん楽しみではあるんですけれども、新感線ってとんでもなくタフな舞台だなと改めて思いました。
――初舞台で新感線に挑むというのは、なかなか勇気が必要だったんじゃないかなと勝手に想像したんですけれど。
そうですね。舞台好きな人だったら、新感線を知らない人はいませんし。私も出演させていただけることになって早速、母に伝えたら、お母さんが「ええっ、新感線に出るの~!?」ってとてもビックリしていて。感激もしていましたね。そのくらい、みんなが知っている舞台で演技ができるなんて本当に光栄なことですから、がんばって準備していきたいと思いました。
――具体的にはどんな準備を?
さっき「お尻を鍛えたほうがいい」と言われたんですけど(笑)。着物も、今日はほんの短い時間しか着ていなかったのに、なんだか腰が痛くなってきてしまって。「腰が痛い……」って言っていたら、スタッフの方から「身体づくりはしっかりしておかないと」と言われちゃいました。あと私、大原櫻子ちゃんがお友達で、『メタルマクベス』の“disc2”を観に行った時にも話をしたんですけど。「新感線に出るのはすっごい大変だから!」と、何度も舞台には出ていて、ジムにもちゃんと通っている彼女が言っていたので、いろいろ教えてもらうつもりです。
――経験を積んだ先輩がすぐ近くにいてくれて、心強いですね。
いや、本当にそう思います。良かった……!
――そして藤原さんは今回“歌うたい”の役ですね。
そうなんです、大陸から来た“歌うたい”の女です。
――キャラクター的には、まだ謎でいっぱいですね(笑)。
ふふふ! ただ、楽器を弾いて歌う女の子だということは聞いているのですが、どういうスタイルなのかはまだ全然わからなくって。楽器も“六絃(ろくしん)”というものらしいですが……まあ、これはきっとギターのことなんでしょうね(笑)。でもどういう形なんだろう、変わった形なのかなあ? きっとライブで歌う時とはまた、全然違う歌い方になるんだろうなって思いました。
――ギターを弾きながら歌うというのは、まさに藤原さんのスタイルですよね。きっと藤原さんにあてて、中島かずきさんが書いてくださったんだと思いますが。
はい、“あて書き”してくださったみたいで。台本を読ませていただいた時には、すごく芯のある強い女の子だなと思いました。
――そして福岡ご出身なので、最後に福岡公演で締められるのはうれしいのでは、と思いましたが。
はい。博多座でやれるのは本当にうれしい! 母もとても喜んでいますし、友達からも「絶対に観に行きたい!」と連絡がありました。
――稽古前に準備しておくのは、まずは身体づくりと?
そうですね。あと発声もやっておきたいです。今までの歌い方とは全然違ってくるだろうし。普通にしゃべっているだけノドを潰しちゃうらしく。長く続く公演ですので、その点もしっかり気を付けたいなと思います。
――個人的に楽しみなことは何かありますか。
舞台の稽古というものがどんな感じなのか全然わからないのでまずはそれも楽しみですし、あと全国各地に行けることもすごく楽しみなんです。ツアーでも各地をまわっていますけれども、終わったらすぐ帰ることが多いので、長期滞在になるのならそれぞれの場所で観光できたらいいなと思いました。
――では最後に、ファンの方に向けてお誘いのメッセージをいただけますか。
私がこの舞台に出演することを告知をした時、「ええっ、舞台に!?」とみなさんかなり驚かれたことと思います。でも私は今回、きっとすごく大きいものがつかめるような、いい経験ができるような予感がしてならないんですよ。ぜひとも観に来ていただきたいので、劇場に遊びに来てもらえたらなと思います。
TEXT:田中里津子 撮影:田中亜紀