/偽義経/ヴィジュアル撮影 レポート 生田斗真篇

劇団旗揚げ39周年にあたる2019年、劇団☆新感線は“39(サンキュー)興行”と称し、まずは春公演として『偽義経冥界歌』を上演します。3/8(金)~の大阪公演を皮切りに、4月には金沢公演、松本公演、そして翌年2020年の2月に東京公演、4月に福岡公演を行うという、少々変則的な上演スケジュールとなります。ここでは、その『偽義経~』に出演するメインキャスト10名のヴィジュアル撮影の模様、加えてその当日に決行したミニインタビューをご紹介! まず一番手に登場するのはもちろん、主人公の“偽義経”こと<源九郎義経(みなもとのくろうよしつね)>を演じる生田斗真さんです。新感線への出演はこれが4回目となる、もはや“準劇団員”の生田さん。スタッフたちともすっかり顔馴染みのため、終始リラックスムードで撮影が進みます。

今回の宣伝美術スタッフとしては、アートディレクターに東學さん、カメラマンに渞( さんずいに首=みなもと )忠之さんという顔合わせで行われています。ちなみにチラシやこの公式サイト等で使われている『偽義経冥界歌』のロゴは、実は東さんが左手で書いたもの。「利き手ではないほうで書くと、うまくコントロールができない分、長さや向きやハネがバラバラになって面白くなるし、それが“偽”っぽくもなるかなーと思ってね」と東さん。そのアンバランスさが不安感、不穏な雰囲気をも醸し出しているようです。そしてチラシで使用するキャスト写真は、今回すべてモノクロ。基本的にはシリアスな表情を中心に、撮影が行われていく模様です。

鎌倉時代を意識した衣裳、メイク、カツラをつけた生田さんがスタジオに登場すると「あれっ、なんだか懐かしくない?」「藤志櫻(とうしろう:生田さんが出演した前作『Vamp Bamboo Burn~ヴァン!バン!バーン!~』の主人公の名前)を思い出すからだね」「おかえりー!」と、さすが“準劇団員”、スタッフからはもはやツッコミにも似た声がポンポン気軽にかけられています。

まずはテスト撮影が行われ、それをモニターで細かい部分までチェックしていた東さんはどうやら烏帽子の顎紐の位置が気になった様子。「ここ気にならない?」と、今回の衣裳を担当する竹田団吾さんに声をかけると、衣裳班が早速駆け寄り、紐を結び直し、垂らさないようにしたり、片方でまとめてみたり。いろいろ試した結果、まとめるよりは垂らしたほうが自然だということになり、長さも微調整。「ここならスッとして見えるね」という位置でOKが出ると、いよいよ撮影開始です。

東さんから「真面目な顔から、だんだんニヤーッと笑ってみて」とリクエストされた生田さん。徐々に笑みを浮かべ、口の左端をキュッと上げ気味にすると「グー!」「かっこいいね」「完璧!」などなど、スタッフ陣は早くも満足そう。あっという間に1ポーズ目は撮り終わり、次はメイクを変え、烏帽子をはずし、髪を下ろした状態にチェンジ。サーキュレーターと手持ちのブロワーを使って風を起こし、髪を乱れさせての撮影となります。東さんが自らブロワーを持ち、生田さんのすぐそばで髪を吹き上げると、絶好のタイミングを狙ってシャッターが切られていきます。その瞬間、瞬間がモニターに映し出されるたびに「おおっ!」と盛り上がるスタッフたち。その間、生田さんは両腕を構え、足を広げた仁王立ちスタイルで、東さんの「もっと強く睨んで、睨んで!」という声に応えてレンズに向かって強いまなざしを送り続けます。やがて髪がふわりと生田さんの顔にまとわりつくように舞った一瞬を切り取ったショットがモニターに映し出されると、ひときわ大きい歓声が上がり、それと同時に「いいじゃん!」と笑顔でOKサインを出す東さん。

撮影の合間に少しだけお時間をいただき、生田さんに劇団☆新感線に対する想いや、今回の『偽義経冥界歌』への意気込みなどを伺ってみました。

――今回、新感線に3年ぶりの参加が決まってどう思われましたか。

新感線のお客様たちに「またお前か!」と言われないように(笑)、一生懸命やらなければ!と思いました。前回の『Vamp Bamboo Burn~ヴァン!バン!バーン!~』の公演がすべて終わったあたりに、いのうえさんから「次は“いのうえ歌舞伎”だな」と言われていたので、それがいよいよ実現するんだと思うと時が経つのは早いなあという気がします。

――“いのうえ歌舞伎”の新作への出演はこれが初めてですね。

そうですね。新感線には何度も出していただいていますが、“いのうえ歌舞伎”の新作には初めてになります。“いのうえ歌舞伎”というと名作が数々ありますから、その中に自分が出るこの作品も入ってくれたら嬉しいなと思いますね。

――台本を読まれた感想はいかがでしたか。

久しぶりの新感線の新作ということもありますし、非常にワクワクしつつ一気に読んでしまいました。立ち回りがあって、歌があって、ほんの少しのラブがあって。いかにも新感線らしい作品になるんじゃないかなと思います。まだがっつり掘り下げて読めてはいないんですけれども。歴史上の人物を描きながらもわりと僕らが出るパートは自由にやることができそうだなと思っていて。あまり型にハマり過ぎずに、舞台上で縦横無尽に飛び回ることができたらいいなと思いました。

――中島かずき作品に出ることも久しぶりですよね。

そうなんです。僕としては、高校生の時に新感線に初めて出演させてもらった『スサノオ~神の剣の物語』以来になります。その時は再演作品だったので、かずきさんの書き下ろし新作という意味では今回が初めてなんです。

――この主人公は中島さんが、生田さんにあて書きしたキャラクターということになりますが。

なんだか基本的に、新感線のみなさんとご一緒するときは必ずちょっと頭の弱い男の役になることが非常に多くてですね。今回も「あ、そっちね!」って思いました(笑)。正義感に溢れた、憎めないおバカちゃんみたいな役になりそうですね。

――新感線に出るたびに、そういうキャラを演じられている気がします(笑)。

そうでしょう? 最初に出演させてもらった時はバカ王子でしたし。ま、そういう風に見えているんだろうと思うし、自分でもきっとそういう人間なんだからしょうがないなと思います(笑)。

――共演陣の中で、気になる方はどなたですか。

先輩方も含めて、みなさん本当に達者な方ばかりで。自分の後輩の中山優馬も今回一緒なんですけれど、彼との共演はこれが初めてなのでその点も非常に楽しみです。

――兄弟役ですね。

そして、お父さんが(橋本)さとしさんという、謎の家族です。一体、どうなるのかなって感じですけど(笑)。

――改めて、いのうえさんの演出を久しぶりに受けることに関してはいかがですか。

いのうえさんの中で、一番気持ちのいい落としどころはどこなのかとか、カッコいいベストな見え方はどこなのかというのを、いつも本当に客観的に見ていらっしゃるので。僕らはそんないのうえさんを信頼して、その上で自分なりの色とか形みたいなものを見つけていけばいいのかなあという風に思っています。

――新感線でやる本格的な時代劇ならではの面白さ、難しさとは。

とにかく立ち回りがたくさんあるんじゃないかと思いますが、今回は特に着ているものがかなり重かったり暑かったりして大変そうですね。だけどご覧になっているお客様たちにとっては、こちらが苦労すれば苦労するだけ、より楽しく観られるはずなので(笑)。ここは大いに苦労をして、大いにヒイヒイ言いながらがんばりたいなと思います。

――新感線の劇団公演に出ることの面白さ、楽しみにしていることは。

やはり、みなさん学生時代からの仲間なわけで。もちろん、劇団としてもすごく大きくなっていってはいますけど、自分たちが面白いと思ったものを誰かに見てもらいたいという、根本的な、純粋な部分はきっと昔からまったく変わっていないんだろうと思うので、そういうところが僕は大好きなんです。細かい計算や、濁ったものなんか一切ないところも素敵ですよね。

――稽古に向けて事前に準備しておこうと思うことは。

今回はまた立ち回りが多い芝居になりそうで、特に早乙女(友貴)くんとの一騎打ちのシーンもいかにもありそうな予感がプンプンしているので、どうにかして彼のスピードについていけるようにしっかりトレーニングはしておきたいなと思っています。新感線の立ち回りって、かなりショーアップされた動きになるので、他ではちょっと見られないような面白い立ち回りになるんじゃないかと。相当、大変そうではありますが、同時にそこが楽しみでもあります。

―― 今回の39興行というのは、2019年に大阪、金沢、松本公演があり、2020年に東京、福岡公演があるという、一風変わった上演形態になります。

そうですね、この前の2年間は東京の豊洲でずっとやっていたこともあって、3年近く地方公演ができなかった劇団☆新感線が「また一緒に地方回りしようよ」と、僕に声をかけてくださったことになるわけですからね。そんな新感線の舞台に、僕も3年ぶりに立たせていただきます! 本当に面白くて、最高に興奮する演劇を作りたいと思っておりますので、ぜひぜひみなさん劇場へお越しください! お待ちしています!!

TEXT:田中里津子 映像撮影:エントレ

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