/偽義経/ヴィジュアル撮影 レポート りょう篇

『髑髏城の七人』Season花に引き続き、再び劇団☆新感線に出演することとなった、りょうさん。『偽義経冥界歌』では、生田斗真演じる主人公の義母にあたる奥華一族の巫女長(みこおさ)<黄泉津(よもつ)の方>を演じます。

と、いうわけでヴィジュアル撮影で用意された衣裳は巫女スタイルをベースにしつつ、それを華やかにアレンジしたもの。メイクを終えたりょうさんがその衣裳で控室から姿を現した途端、その神々しさに「おぉ~、素敵!」とため息にも似た声がスタッフ陣から漏れ聞こえてきます。

すると、撮影直前にりょうさんの頭に載せられた天冠を見たアートディレクターの東學さん、「あれ? 鳳凰はつけないの?」と衣裳担当の竹田団吾さんに確認。「今からでもつけられるよ。つけてから撮ってみる? 鳳凰、くださーい!」との竹田さんの指示で、すぐさま鳳凰の飾りを持ったヘアメイクのスタッフが登場し、冠のてっぺんに鳳凰の飾りをドッキング! 一気に豪華になり、存在感を増す冠。しかし何枚かテスト撮影をして検討を重ねた結果、高さが出てしまうことや全体のバランスを見て、やはり鳳凰の飾りははずしておくことに決定。再び、最初の冠に戻し、髪の後れ毛を整えると、いよいよ撮影開始です。

途中で、カメラマンの渞( さんずいに首=みなもと )忠之さんが首の傾き加減を気にする様子を見せると、モニター前から移動してきた東さんがりょうさんの正面に立ち、改めて左右のバランスをチェック。それが結構な至近距離だったため、りょうさんはついつい照れ笑い。

正面を向いた状態でポーズが決まり、シャッター音に合わせてモニターに撮影済みの写真が次々と展開していくと、それを眺めながら「かっこええ~」「これ、俺、好っきやな!」と嬉しそうな東さん。薄い眉が今回のメイクのポイントになっているようで、メイクスタッフによるちょっとした直し作業も実に繊細。丁寧にじっくりと眉を直している間、ヘアの担当スタッフたちもりょうさんの周りを取り囲み、後れ毛や冠の位置を細々と微調整していきます。その様子を見ていた東さんが「大人数で、よってたかって!」とツッコミを入れると、きりっとクールな表情をキープしていたりょうさんも「アハハ!」と大きく笑っていて、この一瞬だけは役柄を離れて気さくな素顔がこぼれています。

準備が整えば、撮影再開。「次は、もう少し優しい顔でお願いします!」と言われたりょうさんが、ふわっと微笑むと「ハイ、これもいい!」と、どうやら手応えがあった様子。その後も「もう一度、キリっとした表情で。おお、グー!」「うん、綺麗! OK!!」と撮影は順調に進んでいきます。

無事撮影が終了後、りょうさんに、早くも再び劇団☆新感線に出演することになったいきさつや、『偽義経冥界歌』への想いを語っていただきました。

――撮影、お疲れさまでした。『髑髏城の七人』Season花以来の新感線ですね。まさか、こんなに早く、再び新感線に出ていただけるとは!という感じですが。

はい、私もすごくうれしいです!(笑) “花髑髏”の時には、まだまだ先の話だなーと思っていましたけれど、なんだかあっという間で。気づいたらもう、準備が始まっちゃっていました……!

――“花髑髏”の出演時に、りょうさんが自ら「新感線にまた出たい」とおっしゃっていたという噂でしたが、それは間違いではないですか?

はい、間違いありません! ものすごくアピールしておりました。正確には「“女兵庫”で出たい!」とアピールしていたんですが(笑)。つまり、私が出ていたのは“花”だったので……。

――その後の髑髏城シリーズのどこかでもう一度、出たいと?(笑)

そうなんです(笑)。シリーズの最後まで1年あるなら間に合うかもと思ったんですけど、さすがにダメでした(笑)。

――兵庫役を狙うというのは驚きでした。

だって兵庫って、すごく面白い役じゃないですか。自分が男の子だったら絶対に、兵庫をやってみたい!と思っていたはずです。そんなことを考えていたら、だんだん新感線の舞台だったら別に兵庫は男じゃなくても、女でもいいんじゃないのかなって勝手に思うようになって。あまりにも兵庫がやりたすぎて、そんな気持ちでいっぱいだったんです(笑)。

――妄想がふくらんで?

そうなんです。それで「“女兵庫”の可能性はないでしょうか?」ってアピールしていたんですが……。なかったです(笑)。

――過去には蘭兵衛を女性が演じていたこともあるわけですし。いずれ、さらなる再演の時にという可能性はまだ残されていますね(笑)。

ええ、50歳過ぎてからでも、ぜひ“女兵庫”をやりたいですねえ(笑)。

――そして今回この『偽義経冥界歌』で、とオファーが入った時はどう思われましたか。

旗揚げ39周年のサンキュー興行で新感線にまた参加させていただけるなんて、と本当にうれしかったです。それに新感線としては3年ぶりの新作ということでしたし。新感線の場合、ひとつの作品が素晴らしいので、またキャストを変えて再演でやろうという機会も多いじゃないですか。だから新作の舞台に立てるチャンスもなかなかないことのように思いますし。そしてそういう意味ではこの先『偽義経』も、いつか再演を重ねることになるのかもしれないと思うと。

――オリジナルキャストとして。

初演の舞台に立たせていただけるというのは、本当にありがたいことだなと思っています。

――中島かずきさんが、りょうさんにあてて、キャラクターを活かしてあて書きをしてくださるということですものね。

そうなんですよね……! この間の『髑髏城の七人』でも、“Season月”の“下弦の月”で羽野晶紀さんの極楽太夫を客席から観た時に「ああ、極楽太夫だ……!」って、しみじみ思ったんですよ。やっぱり、初演のキャストの方って存在からして役にピッタリで。だからこの先、『偽義経』が再演されることになった時に「そういえばこの役、初演ではりょうがやってたなあ」って思い出していただけるような、何かインパクトを残せるように演じられたらうれしいなと思っています。

――巫女長という役柄は、りょうさんにとても似合いそうだなと思いました。

そうですか? 私としては、洞窟にいたり、周囲に木乃伊(ミイラ)があったりするから、なんだか自分の役は“鬼”にしか思えなかったですけどね(笑)。深く考えていくのはこれからなんですが、台本から見えてくる空気感みたいなものは、確かにかずきさんがあて書きしてくださっただけあって、自分の持っている強いところや、これまでいろいろな役を演じてきた中での得意分野というか、自分のイメージに近い部分が書かれているようにも思えました。特に新感線の作品では、そういう自分のイメージ、人が抱いているキャラクターを思いっきり出していいんだとも思うんですね。ですから第一印象で「ああ、私は鬼なんだな」と思ったということは、それも自分の得意な面なのかもしれないから、そういう視点から役に入ってみるのも面白そうだな、と。自分の武器が出せそうですしね。

――それこそ、兵庫がやりたいとおっしゃっていたということは、もっと身体を動かす役をやりたかったのかなとも思いましたが。

そう! 動きたかったんです。なのでぜひ、今回はもっと動きたいですね! 

――巫女長と言われるとあまり動かないのかなと思いきや、ちゃんと動く場面もどうやら用意されているとか?

そうみたいです。私、数年前にちょっとキックボクシングをやっていたので、台本をいただく前から再び週1回のペースで通い始めていて。そのあと、準備稿ができてきたので読んだら、もしかしたらキックボクシングがぴったりのアクションかも!と思えたので、通う回数を増やそうかと思っているところです。まだ稽古前なので、実際どの程度のアクションになるかはわからないんですけど。いのうえ(ひでのり)さんにどんなことを求められるかわからないし、求められた時にはすぐ動けるようにしておきたいので、とりあえず体力はしっかりつけておくつもりです。

――“花髑髏”で、いのうえさんの演出を初めて受けてみて、いかがでしたか。

いのうえさんが、自ら動いて演出してくださるんですが、その通りにやろうと思ってもなかなか難しくて。最初にその役の感情であったり動きを自分なりに考えておくと、いのうえさんのつけてくださった演出にうまく合わせられないんですね。それで最初に自分が考えていたものを全部忘れてから、改めていのうえさんの演出を見て、そこにのせるようにしていったらできるようになって。でもその方法に気づいたのが、稽古の中盤あたりで遅かったので、今回はそういうことがないように稽古の最初からそのやり方を試してみようと思っているんです。

――いのうえ演出のコツはつかんだ、と?

どうなんでしょうね(笑)。だけど前回よりは、いのうえさんが求めていらっしゃるものをスムーズに形にできるんじゃないか、ぜひそうしたいなと思っています。

――でも、演出を受けるのは2回目になるので。

ええ、その点は初めての時よりはすごく有利な気がしています(笑)。きっと前回よりもたくさん、演出をつけていただけそうな気がしますしね。

――では、りょうさんからお客様へメッセージをいただけますか。

とにかく3年ぶりのいのうえ歌舞伎の新作ということですし、ついこの間まで豊洲の回転する劇場でやっていましたが久しぶりに回転しない劇場でやりますし(笑)。劇団☆新感線にとっては、大阪公演からスタートするというのも、大きな意味があると思います。いのうえさんもコメントでおっしゃっていましたが、回転劇場での演出を経たことで果たしてこの最新作はどんな舞台になるのか、私自身もとても楽しみなんです。きっと、お客様にも楽しんでもらえるのではないかと思います、ぜひ劇場にお越しください。

TEXT:田中里津子 撮影:田中亜紀

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