/偽義経/ヴィジュアル撮影 レポート 橋本さとし篇

『偽義経冥界歌』のヴィジュアル撮影レポートの、ラストを飾るのは橋本さとしさんです。2018年の『メタルマクベス』disc1で劇団☆新感線の舞台に、なんと21年ぶりに復活を果たしたさとしさん、今回は奥華一族の当主で、生田斗真演じる“偽義経”こと玄久郎の実父である<奥華秀衡・おうがのひでひら>を演じます。

一族の長ということもあり、貴族風の衣裳に口髭という貫禄あるいでたちに「なんだか新鮮!」と周囲のスタッフ陣。烏帽子は2種類用意してあり、まずは長めのものから装着してみると、あちこちから「長いなあ~!」との声が。すると早速「顔が?」と自ら反応するさとしさんに、「顔も!!」と間髪入れずに即答するスタッフたち。

アートディレクターの東學さんは「これも、面白いっすけどねー」とニヤリとしつつも、他のキャストとのバランスも考えて結局は短めバージョンの烏帽子を被ることに。「長いほうが僕の顔の長さをカバーできると思ったのに!」とボヤくさとしさんに、「いや、こっちのほうがホッとする長さやから!」と、東さんは苦笑い。

立ち位置でスタンバイすると、衣裳スタッフが左右のバランスを見ながら、袖の張り具合を確認。その間、メイクスタッフは口髭の流れを丁寧に整えています。カメラマンの渞忠之さんから「ちょっと偉そうにしてみてください」と言われたさとしさんが早速グッと胸を張り、ポーズを決めると撮影開始。

「少し顎を上げて、真面目な顔で」「次はちょっとだけ優しい顔で」「今度は穏やかな表情で」など、繰り出されるさまざまな注文に応えていくさとしさん。衣裳担当の竹田団吾さんが「ちょっと神秘的な感じ、雅な感じもいいねえ」と笑顔で見守っていると、さとしさん本人は「神秘的? そうかなあ??」と複雑な表情。東さんから「どうしても悪い人に見えるな」と言われると、「俺、基本は悪顔(ワルガオ)やからねー」と笑っています。

「お、今の、いけてんちゃう?」とモニター映像を確認した東さん、納得いくカットが撮れたようで「OK!」との声が出るや否や、速攻で「ありがとうございます!」とモニター前に足を運ぶさとしさん。撮影済みの粟根さんの写真と、今のOKカットが並べて映し出されている画面を目にすると「粟根さんとのツーショットも、めっちゃうれしいですよ!」と、満足げにニッコリ。

撮影後、さとしさんにも今作『偽義経冥界歌』への想いと共に、改めて劇団☆新感線の舞台に再び出演することについてを語っていただきました。

――『メタルマクベス』disc1で復活を遂げてから、こんなに早く、またしても新感線の舞台に立たれるとは。

なんだか、肩透かししたみたいなスピードですよね(笑)。「21年ぶりに『メタルマクベス』で、さとしが劇団☆新感線に復帰!」と言われ「これは貴重だ!」と思われていた方もいらっしゃったと思いますが、今年もまた観れます(笑)。といっても、今回は僕の中ではちょっと意味合いが違うんですよ。『メタルマクベス』の時は、disc1に出ていた劇団員は(橋本)じゅんさん、粟根(まこと)さん、(山本)カナコ、いそちゃん(礒野慎吾)、吉田メタル、村木仁だけでしたが、今回は劇団員ほぼフルメンバーの中で一緒にできるので。そして中島かずきさんが書き下ろす、いのうえ歌舞伎という意味では僕としては『野獣郎見参!』(1996年)以来ですからね。そういう意味では今回は、より新感線時代の自分に帰れるような気もします。それでいて役柄は、イケイケキャラが多かった当時とはだいぶ違うキャラクターですからね。

――中島さんが、現在のさとしさんに合わせて書いたわけですね。

はい。かずきさんが、今、さとしにこういう役をさせたら面白いんじゃないかというところを狙ってあて書きしてくださったんだろうと思います。当初は、立ち回りのことを心配されていたみたいなんですけどね、もう50歳も越えていますから。でも『メタルマクベス』をかずきさんが観に来た初日に「まだまだイケるね!」とおっしゃっていたので、どうやら自分が予想した以上に立ち回りが多くなりそうです。僕は現役の頃は“肉体労働班”で、身体を動かしてナンボだったんですよ。今もその点は相変わらずということになりそうなので、また体力を作り直して参加しようと思っています。

――そして今回の39興行は、ちょっと珍しい公演形態ですね。2年にわたる長丁場になりそうですが。

ホントですよね。でも僕にはこのスケジュール、有難いんです。『メタルマクベス』は東京公演しかできなかったので。やっぱり劇団☆新感線は大阪出身の劇団でもあるし、僕自身も大阪出身だから、その大阪から始められるというのは、本当にうれしいし。そして長丁場な分、それだけ長く新感線にいられるわけですからね(笑)。

――『偽義経~』というこの物語の内容に関しては、いかがですか。

やっぱり今回も、かずきさんワールドだな!と思いましたね。それぞれのキャラクターが本当にイキイキと描かれているので、この世界観の中に自分も入れるということがとてもうれしいです。かずきさん自身も嬉々として書かれているんだろうなということが伝わってきました。リアリティのある嘘に、ケレン味とエンターテインメント性がふんだんに盛り込まれていて、時代背景もしっかり描かれている中にフィクションとノンフィクションがうまくミックスされている。かずきさんとはこの間、再演になりますけど『戯伝写楽』(2018年)という作品でも久しぶりに一緒にやらせていただいているんです。その時も数々の江戸時代の有名人たちが物語に登場し、やはり嘘と真実が絶妙に混ざり合った物語になっていて。お客様に「もしかしたら、こういうことだったのかもしれない」と思わせる説得力があるんですよね。

――今回もきっとそんな感じになりそうですよね。嘘とまことが入り組んで。

そうですね。タイトル自体から“偽”って字が入っていますし。『~写楽』の時も“戯伝”でしたけど(笑)。

――史実を知っていると、より面白いのかもしれません。

そう思います。正直、この時代のものって馴染みがそれほどないので、僕も稽古に入る前の準備として、時代背景に関することを自分なりに研究してから物語世界に入ろうかと思っています。

――そして今回の主演は、生田斗真さんです。

僕、ずっと一緒にやってみたいなと思っていたんです。しかも今回、僕は斗真くんのお父さんなんですよね。あ、そうか、いよいよ自分もそういう年代になってきたかとしみじみ思いました(笑)。僕の中で、お父さん役はもちろん、雅で、権力者だという役回りって初めてなんですよ。そこはやっぱり、かずきさんが今の自分にあてて書いてくださったキャラクターだと思うので。それにたとえ自分の持つ器の中にデータがなかったとしても、いのうえさんが引きずり出してくれるはずですからね。ここはもう絶対的な信頼関係の下で、いのうえさんをひたすら信じて役を広げていこうかなと思っています。

――また、稽古場でいのうえさんの演出が受けられることに関しては。

楽しみですね。いのうえさんの前では自分の持っているものすべてが発揮できるんです。正直、不安はあったんですよ、『メタルマクベス』の時。21年ぶりのいのうえさんの演出に、自分はちゃんとついていけるだろうか、と。そして案の定、いのうえさんの演出は今でも、20代の頃の僕へのリクエストとほとんど変わらなかった。「空中で一回止まれ!」って、まだ言わはるんや!と思いました(笑)。「マジですか!?」って内心思うんですが、そこで僕も素直に「ハイ」って返事するので。できないことでも、気合さえ入ればできるような気になってしまう(笑)。だけど、その変わらなさ加減が本当にうれしかったです。いのうえさんの中にいる、橋本さとしは昔のままのさとしで、僕の中でのいのうえさんは今もずっと絶対的な存在で。いのうえさんの言うことに関して、僕が決して首を横に振ることはないのでね。

――では今回もその関係性のままで稽古に臨む、と。

はい、そうですね。自分が劇団を抜けてから以降、いろいろなゲストが出演されるようになってから主演を張られてきた方々の中でも、最も劇団☆新感線っぽい雰囲気を持つ方と言えそうな生田斗真くんを主演に迎え、そこに橋本じゅんさんや昔からずっとやり続けている先輩、後輩たちと一緒に僕もこの中で演じられることが本当にうれしい。かつてサンシャイン劇場やシアターアプル、大阪で言えばシアタードラマシティや近鉄劇場でやっていた頃の新感線の懐かしい匂いをぜひ、お客様にも感じていただきたいです。新旧のメンバーがずらりと揃って、ここ最近で一番劇団☆新感線っぽい作品が作れたらいいなと思っています。劇場で、お待ちしています!

TEXT:田中里津子 撮影:田中亜紀

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