/偽義経/ヴィジュアル撮影 レポート 早乙女友貴篇

『蒼の乱』以来、5年ぶりに劇団☆新感線の舞台を踏むことになった早乙女友貴さん。今回の『偽義経冥界歌』では、本来なら“偽”ではない“義経”になるはずだった男、<遮那王牛若(しゃなおううしわか)>を演じます。

早乙女さんが衣裳をつけて控室から出てくると、ちょうどこのあと撮影が予定されている粟根さんが絶妙なタイミングでスタジオ入り。『蒼の乱』以来の共演となる二人は顔を見合わせて、「今回はよろしくお願いします!」とお互いに丁寧なご挨拶。

いわゆる“牛若丸”のパブリックイメージとはかけ離れたキャラクターになりそうな<遮那王牛若>ですが、とはいえ今回用意された撮影用の衣裳はいかにも高貴な雰囲気。「美しい!」「品がある!」とスタッフ一同から声をかけられ、照れ臭そうに微笑む早乙女さん。

衣裳の竹田団吾さんが「この役って、いけすかないキャラだったよね」と、アートディレクターの東學さんに確認すると、東さんは「でも、まずは普通の表情から撮ろうか」と返して、ここから撮影開始。「キリっとした顔で、顎はもうちょっと引き気味で、グッと目ヂカラをください!」との東さんからの注文に、凛々しい表情で応える早乙女さん。

次々と映し出されるモノクロ写真をモニターでチェックしていた東さんからの指示で、頭の位置をミリ単位で微調整することに。両手で頭をはさまれた早乙女さん、ちょうどスタッフと至近距離で目が合ってしまったようで、ついついお互いプッと吹き出しています。どうも、この侍烏帽子の位置が深めに被り過ぎていたようで、これを少し後ろ目にずらすことに。「顔がちっちゃいからスポッと入っちゃったのかもね」と言われ、早乙女さん自身もモニターをチェックしたあと、今度は苦笑い。

カメラマンの渞忠之さんから「次は、ちょっとだけ笑おうか」とリクエストされ、薄く笑ってみせる早乙女さん。東さんからさらに「左の唇のはじで、悪そうに笑って」と言われると、ゆっくりとニヤリ。そのクールな表情がモニターに映し出されると「ああー、悪い顔だ」「でも、カッコイイねえ」と、周囲はザワザワ。その中の一枚に素早く反応し「これ! これ、いいじゃない!!」と満足そうな東さんの声が響くと、湧き上がる拍手と共に撮影は終了です。

撮影後、早乙女さんにも、これが二度目の参加となる劇団☆新感線への想い、今回の作品への意気込みなどを語っていただきました。

――おつかれさまでした! まずは今回の『偽義経冥界歌』への出演のお話を聞いた時、どう思われたかということについて、お聞かせください。

純粋に、ものすごくうれしかったです。僕は劇団☆新感線に出させていただくのは、『蒼の乱』以来で二度目になるのですが、前回はあまりにも緊張し過ぎていて、ほとんど記憶がないんです。その時は、まだ17歳だったんですけどね。あれから5年ぶりにまたお話をいただけて、素直にうれしいの一言です。

――『蒼の乱』の時の、記憶がないというのは。

結構、長期公演だったはずなんですが、自分があの公演の時にどんなことをやっていたのか、明確に覚えていないんです。僕、ふだんは舞台で緊張することなんてないんですけど、あの時は場当たりの時点からすっごい緊張していて。周りがまったく見えていない自分に、本当に驚きました。あの時はもうとにかく、自分の目の前のことをただただ一生懸命やろうという気持ちしかなかったです。

――早乙女さんの場合、殺陣の量も人一倍すごかったのではと思いますが。

殺陣に関しても、悪い思い出しかないんです。いや、それは自分のミスだったんですが。

――難しかったんですか?

いや、新感線の舞台で使う刀を扱うのは、あの時が初めてだったんですよ。すごく使いやすくて軽い刀なんですけど。

――ふだん使っているものとは違う?

違う感じなんですよね。インディ(高橋)さんが、作ってくださっていた特殊な刀なんだと思いますけど。すごくやりやすいのは確かなんですが、それに慣れるまでに時間がかかるというか。しかも僕、あの時は1公演で3回刀を落としてしまったことさえあって。スポン!と、手から抜けてしまったんです。

――そんなことは、今まで。

一度もしたことがなかったので、すごく凹みました。そうしたら兄(早乙女太一)もさすがに気づいて「どうした?」って心配してくれたんですけどね。自分でも「あれっ? 右手どうしちゃったんだろう?」って思いました。だけど実際、すごく使いやすい刀なんですよ。という、そんな思い出は残っています。

――早乙女さんは、さまざまな舞台作品に出られていますが、新感線の稽古場は他の現場とは雰囲気が違いますか。

違いますね。僕はもともと『髑髏城の七人~アオドクロ』、染五郎さんがやられていた舞台をDVDで観た時に、新感線という存在を知り、それをきっかけにして殺陣に真剣に取り組むようになったところがあって。それまでもやってはいたんですけれど「こんなにすごいものがあるんだ、自分ももっとがんばろう」と思わせてくれた作品だったのが『アオドクロ』だったんですね。だから、新感線に初めて出させていただいた時は本当にうれしかったです。

――そして、今回またお声がかかって。しかも牛若役。これってつまり、本物の義経ということですよね。

そうですよね。実は僕、一つ前に出演していた舞台(『遥かなる時空の中で3』)でも源九郎義経役を演じていたんです。

――義経続きですね(笑)。

あれ? 俺、義経連チャンなんだ!と気づいた時は自分でも面白いなと思って。だけど、作品自体が全然違う世界観なので。

――同じ役だと言えば同じ役なんだけれど、こちらの牛若さんは結構やんちゃで。

僕も、そう思いました。なんだか、まるでクソガキみたいな、いかにも悪―い感じ。だから、いわゆる“義経”とはまったく違うイメージのキャラクターとして演じられたらいいなと思っています。

――『蒼の乱』の時、初めていのうえさんの演出を受けてみて感じた面白さや難しさは。

いや、本当に難しかったです。でも『蒼の乱』の時にはそれほどいろいろ言われた記憶はなくて、比較的自由に動いていることのほうが多かった気がするんですよね。ですから今回は、きっとボロクソに言われそうな予感がします。

――覚悟を決めている?

決めています。腹をくくっています(笑)。

――既に稽古場で、いのうえさんの“千本ノック”は目の当たりにしているはずですものね。

はい。自分以外の人がやられているのを見ると、怖いなあと思いつつ。だけど僕自身は、いのうえさんに演出していただけた時、「わあ、あのいのうえさんにお芝居のことを教えてもらえて、段取りをつけてもらっているんだ!」ってうれしく思っていたので。だから今回も、ただひたすら一生懸命応えなきゃ、と。自分が持つ引き出しで、しっかり応えていけるのかなという不安は、まだありますけど。

――面白い立ち位置の役ですしね。

そうですよね。稽古しながらどうなっていくのかも、すごく楽しみです。だけど、とにかく一番怖いのは中島かずきさんが書かれたト書きです。「さらに殺陣のスピードが増し……」みたいな(笑)。今回、もしかしたらとてつもない殺陣やアクションをやらなければならないかもしれません。

――そういうシリアスな殺陣もありつつ、ちょっと変わったキャラクターでもあるので。

そうなんですよ。オモシロの場面のほうが、むしろ怖いです。それこそ、いのうえさんに千本ノックされそうですが、でもしていただいたほうが幸せを感じますね。

TEXT:田中里津子 撮影:田中亜紀

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