/けむり/ヴィジュアル撮影 レポート 須賀健太篇

「髪型のせいなのか、なんだか美少女剣士に見えちゃうね」と、その可愛さ、凛々しさが大好評だった須賀健太さんの侍姿。2017~2018年の『髑髏城の七人』Season月に続き、劇団☆新感線にはこれが二度目の出演となります。『髑髏城~』で演じていた兵庫役の時は同じ時代劇とはいえ、かなりワイルドな印象でしたが、それに比べると今回は正統派。破れ菱の模様が入った麻の直垂(ひたたれ)は辛子色で、意外に大人っぽさも感じさせます。小手と、額に巻いた“陣鉢(じんぱち)”で戦闘態勢を表現しているものの、良く見れば腰には御守りが何個も下がっていて、そんなところからも須賀さん演じる雨森源七というキャラクターがなんとなく予想されます。

アートディレクターの河野真一さんのリクエストを受け、カメラマンの相澤心也さんがライティングの色味のバランスを微調整し、ヘアメイクの宮内宏明さんが髪をしばる位置をより高く修正すると、いよいよ撮影開始です。河野さんは自ら、刀を構えて須賀さんにポーズを指示。「源七は弱っちい侍なんだけど、必死でお姫様を守ってる」「汗をダラーってかきながら、マジーマジー?って言いながらもなんとか踏ん張ってる、という感じで」と言われ、須賀さんは「はい! わかりました!!」とキリリと元気よく反応。

その真剣な表情を見て、シャッターを切っていた相澤さんは「今の、ゴクっと生唾のみ込む感じがいいっすね」。すると河野さんからは「次は、もっとヤケクソ感があってもいいな。わーっと叫んでいるような」と言われ、須賀さんは困り顔で「ウワーッ」と叫んだり、悔しそうに歯を食いしばったり。ちなみにこの撮影でも“風”係を兼任している宮内さん、須賀さんのくくった髪の束をタイミング良く下から吹き上げるため、床に横になって最も低い位置からブロワーで絶妙な風を起こしています。背後で実はそんな妙な姿勢になっていた宮内さんにふと気づき、ついつい笑ってしまう須賀さん。

照明にうまく反射するようにと、構えた刀身の位置や傾き加減をミリ単位で調整しながらの撮影はいつもならピリッとした緊張感を伴うものですが、二度目の参加ということと須賀さんの明るさ、懐っこさもあって、スタジオ内の空気はすっかりリラックスモード。何カットか撮るたびに、スタッフみんなでモニターを賑やかにチェックしては「おお~、かっこいいじゃん、かっこいいじゃん!」と、テンションは上がる一方。

動きのあるショットの撮影ではジリジリと寄って来るカメラに追い詰められ、相澤さんからワッ!と脅かすように叫ばれると、ヒャッと本気で驚く須賀さんの顔がモニターに。その表情のリアリティには、見守るスタッフたちの間に思わずクスクス笑いが広がります。「刀を合わせた相手は(早乙女)太一くんだと想像して」と河野さんが設定を提案すると、「絶対勝てない……」と呟く須賀さんに「その、めっちゃ怯えてる感がいい!」と相澤さんはニコニコしながらさらにシャッターを切っていきます。他にも両手両足を広げてダイナミックにジャンプしたり、キックしたりと身体能力をめいっぱい駆使した撮影となりました。撮影の合間を縫って時間をいただき、須賀さんに二度目の新感線参加のこと、作品への意気込みなどを語っていただきました。

――劇団☆新感線には二度目の出演ですね。このお話が来た時はどう思われましたか。

めちゃめちゃうれしくて、ありがとうございます!って感じでした。前回『髑髏城の七人』Season月に出させていただきましたが、作品も、兵庫というキャラクターも大好きだったので本当に幸せでした。だけどあれは、Seasonが複数あって出演者が多かったからこそ、キャスティングが僕までたどり着いたってところもあったんじゃないかな、なんてちょっと思ったりもしていて。そういう意味では、今回は僕の代わりはいないというか、シリーズの中の1本でもないですしね。新作で自分の役があるというこの状態で、再び新感線に出させていただけるなんて、ちょっと夢みたいです。その上、共演させていただきたかった方々ばかりですしね。劇団員の方たちも多いし、そしてやっぱり、“太夫”もいますし。僕にとって聖子さんは、まだ“太夫”なんですよ(笑)。

――でも、そうやって“俺の太夫”だったはずなのに、今回のヴィジュアル写真では。

いや~さっき聖子さんの写真を見せてもらったら、もうビックリしました。歯、黒いな!って(笑)。ま、もちろんストーリーも、関係性も全然違いますから、また新しく楽しんでやれたらなと思います。

――古田さんとは、これが初共演なんですね。

初、ですね。『髑髏城~』の時に稽古場に来てくださってご挨拶させていただき、一緒にごはんに行ったんですけど。その時もいろいろといいお話を聞かせていただいたので、今回ご一緒できるのがすごくうれしくて。キャラクター的にも、近くにいる時間が長そうですし、それは成志さんもそうなんですけど、先輩たちから学べることがたくさんありそうなのでそのことも楽しみです。ただ、個人的には千本ノックの気配しかしないんですけど……(笑)。

――前回は、いのうえさんからの千本ノックをたくさん受けたんですか。

そうですね、キャラクター的にも動きが多くて、セリフのテンポ感みたいなところをひたすら言われていました。今回はちょっと笑いの要素もあるので、そういうテンポ感や間について、たぶん厳しく言われそうですし、ぜひ言っていただきたいなという思いもすごくあります。

――池田成志さんとも初顔合わせなんだとか。

はい、でも『月髑髏』を観に来てくださいましたし、古田さんも成志さんも僕が出ていた『ハイキュー!』という舞台を観に来てくださって。お二人とも実はユニフォームを着て稽古場で写真撮られていたくらいに『ハイキュー!』がお好きなんだそうです、なんだか面白いですよね(笑)。初めて共演してみたらこんなもんかと思われないように、がんばるつもりです。僕は『髑髏城~』のSeason鳥を客席で観た時に腹抱えて笑いましたし、今回の台本にはものすごく楽しみな場面がたくさんあったので。近くで見られるだけ見てやろうという気持ちは強いです。

――清野菜名さんとは映像で共演済み。

ドラマや映画などでは何度もご一緒していて、結構前から知っているので。そういう意味ではすごくコミュニケーションは取りやすそうですね。しかも今回すごく密な関係の役でもありますので、その二人の関係性をしっかり伝えていければいいなと思います。

――清野さん演じるお姫様を守らなければいけない役です。

いや、でもご本人はものすごくアクションもできるし動けるし、強いからなあ(笑)。守りきれなくてもいいのかも、そんな頼りなさでやっていこうかと思っています。

――その頼りないかもしれない源七さんを現時点では、どう演じたいと思われていますか。

なるべく人間臭く、泥臭くやりたいなというのもありますし。ヌケてるところもあるので、そういうところは嫌味に見えないようにやりたいですね。息抜きできる存在というか、戦いの中でもコイツが出てくるとちょっとホッとできる、みたいな印象を持ってくれたらうれしいです。これまではどちらかというと元気な人物を演じることが多かったんですが、そことはまたベクトルがちょっと違うので。別に元気じゃないわけではないんですけど、空回っているというかね(笑)。それって、僕の中でも新しい引き出しになりそうなので、存分に空回りたいなと思いますね。

――ここで改めて、新感線の好きなところや面白いところとは。

壮大で、カッコいいいところです。純粋にカッコよくするって、めちゃめちゃエネルギーがいることなんだなあって僕は思っていて。客席で観ていると、毛細血管がうわー!ってなるんです(笑)。僕は小さい頃からチャンバラもヒーローものも大好きなので、新感線の活劇度合いってもうたまらないんですよ。キャラクターもすごく魅力的で、いろいろな人がいて面白い。そういえば今回、僕が演じる源七っていうのも新感線の舞台には欠かせないポジションの役だと思うんですよね。かつ、すごく責任のある立場でもあるのでそこを任せていただけるというのも光栄です。そう、観ている時はただただ楽しいんですよ、新感線は。でも、やるとなるとめっちゃ大変なんです(笑)。

――『月髑髏』で一緒だった早乙女太一さんとは、ふだんから仲が良いそうですね。

前回で本当に仲良くなって、今でも週1で会うくらいです。だからもう、結構いろいろバレてるんですよ。僕が稽古中にすぐチラッといのうえさんのことを見るって話をさんざん言われていますし、あと「すぐおまえはお客さんに媚を売る」って言うんですが、違う、違う、媚は売ってないから!って。ま、どうせ今回もいじめられるんでしょう(笑)。

――今回は“39興行”ということなので、須賀さんにとっての“サンキュー”を教えてください。

家族にはやっぱり感謝してもしきれないものがあります。生んでくれてありがとう! そしてみなさんにもサンキューです。僕自身も、一応今年で芸能活動20周年なんですよ。今までいろいろな作品をやらせていただけて、それらに関わってくださった方みなさんに感謝です。

――そして古田さんも劇団に入って35周年とのことなので、お祝いコメントをいただけますか。

35周年、おめでとうございます。そんな節目にご一緒させていただけるなんて、本当になによりうれしく存じます。まだまだ僕、古田さんの前では緊張気味なので。もっともっと仲良くさせていただければと思います。

――最後に、お客様へもメッセージをいただけますか。

今回は初挑戦の部分がたくさんある役柄なんですが、この挑戦がうまくできればきっとみなさまに愛していただけるキャラクターになると思います。台本を読むと、これをどう舞台化するんだろうという不思議なシーンだらけなので、そういう意味では僕自身もまだまだ楽しみにしているところが多い作品でもあります。みなさん、ぜひとも劇場に足を運んでください、よろしくお願いします!

TEXT:田中里津子 撮影:田中亜紀

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