/けむり/ヴィジュアル撮影 レポート 清野菜名篇

2017年の『髑髏城の七人』Season花以来、劇団☆新感線にはこれが二度目の出演となる清野菜名さん。『髑髏城~』では沙霧役で激しいアクションを軽々とこなしていた清野さんでしたが、今回の『けむりの軍団』では紗々姫というお姫様の役を演じます。花の髪飾りをつけた姫カットのヘアスタイルに、朱色の織り入りの打掛姿がゴージャス。これに旅装束風に、“市女笠(いちめがさ)”と呼ばれる笠や杖などが小道具として用意されています。清野さんが準備を整えて姿を現すと、すぐさま「かわいい~!」と歓声を上げるスタッフたち。加えてちょうどスタジオに来ていた、いのうえひでのりさんも一緒になって「おっ、かわいいな」などと言いながら、ニコニコ見守っています。

アートディレクターの河野真一さんから「このお姫様の場合、おてんば感もほしいんだよね」との追加注文を受けたヘアメイクの宮内宏明さん。その場でチークを少し重ねて、より健康的な雰囲気をプラス。さらに、サイドの姫カットのラインの角度が「ちょっと重く見える気がしない?」と言われた宮内さん、「じゃ、ちょっと切ってみようか」とハサミを取り出し、ミリ単位でカット。「うん、このくらいスクエアに、ぱつん!としているほうがいいと思う」と、頷く河野さん。

清野さんには「早く、早く!って感じで扇子を振ってみて」「ちょっとウインクしてみようか」「須賀(健太)くんが演じる源七に、行くわよ~!って言ってる感じで」などなど、河野さんから具体的なリクエストが与えられ、パアッと明るい笑顔を振りまいたり、「源七っ、行くわよ!」と元気よく叫んだり。また、この明朗快活なお姫様の笑顔から、一転してキリッとした凛々しい顔になったり、くるくると表情が変わるところもかわいく、「イエ~イ!」と扇子を振っていると、それに合わせるようにカメラマンの相澤心也さんも「イエ~イ! いい感じ!!」とノリノリでシャッターを切っています。

セットチェンジなどのちょっとした空き時間には、扇子を開いたり閉じたり、振ったりしてみている清野さん。そこに河野さんから「よし! 次は裾をたくしあげてみようか」との声がかかり、衣裳スタッフの指導で清野さんが自ら着物の裾を持って今にも走り出しそうな前傾姿勢に。よくよく見ると、清野さんの履いている草履の鼻緒もきちんと着物に合わせた色合いと柄になっていて、細かいところにもすべて行き届いているスタッフの心遣いを感じます。

さらに、おすまし気味、ちょっと優しげに微笑んだり、憂いのある表情をしたりと、一度おとなしめのショットを押さえてから、再び今度は豪華な打掛は脱ぎ、白のたすき掛け姿になって飛び跳ねたりと、動きのあるポーズの撮影に移行。河野さんから「須賀くんに、行けーっ!て命令する感じで」と言われた清野さん、カメラのレンズに向かって指差しながら「源七、行けーっ!!」。その勢いには、相澤さんが「行った、行った、飛んでったね」、河野さんも「須賀くんならどこまででも行きそうだな」と返して、スタジオ内は一同爆笑。

清野さんには撮影の合間に時間をいただき、再び参加する新感線の舞台への想い、意気込みなどを聞いてみました。

――劇団☆新感線には『髑髏城の七人』Season花に続いての出演ですね。今回の『けむりの軍団』へのオファーの話を聞いた時は、どう思われましたか。

とてもうれしかったです。新感線の舞台に、もう一度呼んでいただけるなんて。前回、一生懸命がんばってよかったな、と思いました。

――やはり、初参加の時は大変でしたか。

大変でした(笑)。とにかく、動く量がものすごく多かったので。もう、がむしゃらにやりましたね。でも、常に全力で走る気持ちで毎日いたんですけど、最後までしっかりやり遂げるためにはその気持ちも大事にしつつ、もうちょっとうまくセーブできるところも自分で見つけて、それが上手にできるようになれたらいいなという風にも思うようになりました。

――一番大変だったのは、やはり体力的なことですか?

自分はまだまだがんばれる気持ちがあるんですけど、身体がだんだんついてこなくなってしまうんです。寝ても寝ても毎日筋肉が重たく感じて、それがなかなか復活しなくて。でもやり切った!という達成感はものすごくありました。カーテンコールのたびに毎回、自分はこのためにがんばったんだという想いを噛みしめていましたね。今日も最後までがんばれてよかった、無事に終われてよかった、って毎日毎日思っていました。

――初めて新感線の舞台に立ったことへの感想はいかがでしたか。

不思議な気持ちでしたね。私、過去に新感線のオーディションを受けたことがあったんですよ。その時は受からなかったんですけどね。それなのにあんな360度の大きい舞台に自分が立てているということが信じられなかったし、そこで新感線のみなさんと一緒に挑んでいるんだということも、なんだか夢みたいでした。

――あれから2年が経ち、前回の沙霧役とも全然違う、お姫様の役を演じることについてはいかがですか。

台本の第1稿を読ませていただいた段階では、実は前回に比べるとちょっと物足りない気がしてしまって(笑)。沙霧は本当にずっと動いていたので、今回の紗々姫ももうちょっと動きたいという希望を、いのうえさんにお伝えしてみたところです。だって、せっかく新感線に出られるのにと思ってしまうじゃないですか。なかなか身体全部を使える挑戦ができるところって他にないですから。

――舞台でアクションできることは、やっぱり楽しい。

楽しいです。ぜひ、またあの感覚を体験したいんですけどね。しかも今回は、早乙女(太一)さんも出演されるじゃないですか。『髑髏城の七人』に出られていたのを、私も観させていただいたんですけど、ものすごく動きが速いし、刀さばきが華麗で美しくて。そういうすごい方の技術を今回はナマで自分の目の前で見られるんですから。稽古が今から楽しみです。

――須賀健太さんとは舞台共演は初めてとはいえ、映像作品では何度も共演されているとか。

そうなんです。同い年で、10代の頃から結構な頻度でご一緒させていただけているので、こういう違った場所でまた一緒に立てるのは、とてもうれしいですね。

――そして今回、主役は古田新太さんです。『髑髏城~』に続いて、また共演することに関しては。

古田さんは、お酒好きじゃないですか。また今回もいろいろなお店に連れていっていただけるのかと思うと、ワクワクします(笑)。『髑髏城~』の時は、東京公演しかなかったのでいつも同じ店だったんですけど、『けむりの軍団』は地方公演もありますからね。今度一緒にできる時に地方公演があったら、美味しい店をいろいろ知ってるから行こうねって言ってくれていたんですよ。あの時の話がこんなに早く実現するとは。ホント、今からワクワクですよ! 古田さんってなんだかもう、頼りがいのあるお父ちゃん、みたいな感じなんです(笑)。

――池田成志さんと初共演することに関しては、いかがですか。

『髑髏城の七人』Season鳥でも観させていただきましたけど、本当にパワフルで面白くて。あの、いい空気を私が一緒にいることで変に壊しちゃったらどうしようっていう心配もありますが、なんとかしてあの成志さんの世界を崩さないようにしたいですね。私、コメディーとか、今まであまり経験がないので、そういうパートが来ちゃったら怖いなと思っていて。

――沙霧には、そういうシーンはなかったですし。

そうなんですよ。みなさんは普通にやってのける方ばかりですけど、でもそれって簡単なことじゃないですから。本当にすごいなって、毎回新感線を観るたびに思っています。間とか、言い方とか教えていただいて、なんとかついていけるようにがんばりたいです。

――そして、義理のお母さん役が高田聖子さんです。

さっき、今回用の写真を見させていただいたら、ものすごく怖かったんですけど(笑)。聖子さんとは、以前舞台でご一緒させていただいていて(劇団チョコレートケーキwithバンダ・ラ・コンチャン『ライン(国境)の向こう』2016年)。あの時は、優しいお母さん役だったんですけどね。今回は、一体どうなるんだろう(笑)。

――粟根まことさんとは初共演ですね。

そう、初めてなんです。他の方には真似できない、素敵な個性を持っていらっしゃる方だし、私、粟根さんが出てくるといつも「新感線の舞台が始まった!」って気持ちになるんです。今回、ようやくご一緒できるので、とてもうれしいです。それにしても新感線の劇団員のみなさんは、本当に面白いですし、稽古場でも「ああ、凄いなー!」って毎回思うんですよ。若い人たちに負けない、あのパワフルさ。みなさんの姿を見ていると「私もこんなところでくじけていてはダメだ、疲れたなんて言っていられない!」って元気づけられます。

――今回は“サンキュー興行”なので、それに絡めて、清野さんにとっての“サンキュー”を教えてください。今、サンキューを言いたい人とか。

マネージャーさんですかね。1からみんなでがんばってきたので。信じてもらえなかったら、ここまでやって来られなかったと思うし、こうして新感線に出られたことも含め、事務所の方に「サンキュー」です(笑)。

――そして、今年は古田さんが芸能生活35周年にもあたるそうなので、お祝いコメントをいただけますか。

前回『髑髏城~』を一緒にやらせていただいた時、立ち回りを褒めていただいて、次に機会があったら一緒にやりたいと言ってくださったことを今でもすごく覚えています。今回は戦う場面がなさそうですけど、どこかでまた一緒に立ち回りができたら、自分の夢がまたひとつ叶うなと思っていますので、今後もずーっと舞台を続けてください! 

――続いて、お客様へもお誘いのメッセージをいただけますか。

今回、再び新感線に出演させていただくことになりました。とってもとっても、ワクワクしております(笑)。また立ち回りもありますので、さらにパワーアップした私を見せられるようにがんばります。ぜひみなさん、劇場に足を運んでください。『けむりの軍団』、よろしくお願いします!

TEXT:田中里津子 撮影:田中亜紀

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