いよいよ本格的な稽古が始まる直前の5月上旬、生田斗真、中村倫也、いのうえひでのりの3名による、『バサラオ』福岡キャンペーンが決行されました。さまざまな媒体に出演したり取材を受けたりで大忙しだった3人が、揃って登壇した合同取材会のレポートが博多座より到着しました!
──まずはそれぞれから、ご挨拶をお願いします。
2020年の『偽義経冥界歌』の博多座公演がすべて中止になってしまったことが、その後もずっとずっと頭の中に引っかかっていて、あの時会えるはずだったお客様たちに会えなかったことをとても悔しく思っておりました。あの悔しさを、今回の公演で晴らしたいと思っています。
福岡は美味しいものがたくさんあって、大好きです!(笑) 今日は、よろしくお願いします。
今回の『バサラオ』のスタートは、今、斗真くんが言ったように2020年の『偽義経~』がコロナ禍にちょうどぶち当たって博多座の全公演が飛んでしまったという、あの悔しい思いをまずは晴らしたいという想いから始まりました。そして斗真くんが出るのなら俺もだろう?ということで倫也くんにも参加していただく形で、しかも博多座から今回の公演をスタートさせるというロマンも含め、なんとかあの時のリベンジを果たしたいと思っています。この夏の博多座から始まり、秋の大阪まで半年近く続く公演となりますが、無事に全員で完走して楽しい舞台を作り上げたいと思います。
──生田さんにはまず、その大変悔しい思いをされた『偽義経~』から4年ぶりに博多座にカムバックすることについて、改めてお気持ちを聞かせてください。
先ほど申し上げたように2020年に悔しい思いをしたということもありますが、今回はそれとは別に “生田斗真生誕39年記念サンキュー公演”というサブタイトルもついているんです。僕がちょうど39歳から40歳になる跨ぎを、この劇団☆新感線の『バサラオ』という作品で迎えることになったから、なんですけれども。新感線との出会いは僕が高校2年生、17歳の時。いのうえさん始め劇団☆新感線のみなさんが、僕に演劇を1から教えてくださり、こんなに時が経ってもいまだにこうして「一緒になんかオモロイことやろうぜ!」「楽しいことをぶちかまそうぜ!」と呼んでいただけることを本当に嬉しく思っています。稽古場に行くたび、本番を迎えるたびに、あの時は学生服を着て稽古場に通っていたなと初心に帰らせてもらえる、僕にとっては実家のような劇団です(笑)。今回も楽しみながらやりたいな、と思っています。
──中村さんは今回が博多座初登場になります。開幕初日を博多座で迎えるにあたって、現在はどういうお気持ちでいらっしゃいますか。
まずはしっかり稽古をし、いいものを作って、それを福岡で最初に見てもらうことはすごくこのカンパニーにおいて意義があることだと思います。演劇界全体で考えても、コロナ禍というものはさまざまな場所で作り手や楽しみにされていたお客様が涙を呑んでこられたと思うので、それをこうしてリベンジできるというのは、ちょっと意味のあることなのかなと思っています。自分は4年前の当事者ではなかったですけれど、その想いを背負った座組の一員として、博多座でしっかりと初日を迎えられたらと思っています。あとは……、最初に何から食べようか?ということを考えています(笑)。
──そこはまだ迷い中ですか?(笑)
美味しいものがたくさんありますからね。みなさん、オススメを教えてください(笑)。
──続けて、いのうえさんにお聞きしますが前回の博多座公演以降、演劇界は本当に大変な時期に陥りました。しかしそのコロナ禍中もずっと、劇団☆新感線は作品を生み続けていたわけです。ご自身としては、その間の作品づくりに変化はあったのでしょうか。
コロナ禍の最中はどうしても閉塞感があったので、極力、せめて劇場の中だけでも明るいものをと心がけて舞台を作ってきたような気がするんですが、それももうそろそろいいのかな、という気持ちになっていて。というのも、元々は悪いヤツが好きで、ガンガン悪いことをしていく主人公というのも逆にスカッとして面白いなと思っていたんです。だけど、そういう内容はコロナ禍ではいかがなものか、ということでずっと避けていて。それで今回は、徹底して悪の限りを尽くす主人公の話にしました。だから、ようやくそういうことが思う存分できるようになったという嬉しさもありますね。
──本作はそもそも生田さんと中村さんのキャスティングありき、でスタートした企画だと伺っていますが。
そうですね。まずはそれがあって、しかもこの2人が歌も踊りもできるからそれを活かした舞台をやろう、だったら音楽がガンガン入るようなものにしたいなと思っていたんです。でも企画当初はまだコロナ禍中でしたから、やはり明るい道中物がいいかなという話だったんですね。でもそろそろもういいか、好きなことをやろうと考え直した時に『リチャード三世』ではないですけれども、悪いヤツが活躍する芝居にしようということになり。そこに、元から考えていた歌や踊りもたっぷり入るショーアップしたものというアイデアが残って、結果的に悪いヤツが出てくるショーアップした芝居になったという流れですね。斗真くん演じるヒュウガというのは、美しい顔で言葉巧みに人を誘い、騙し、そして天下を狙う男。そういうピカレスクロマンがお好きな方は、今回かなりハマっていただけるのではないでしょうか。舞台としては鎌倉時代後半から南北朝時代をモデルにしているので、裏切り、反逆、陰謀が渦巻く物語になります。自分としては、そこを整理してわかりやすく見せるのがまず大変かなと。だから、そこをうまく際立たせることができたら、ものすごく面白くなると思います。
今、ふと思い出しましたけど、思い起こせば僕が初めて新感線に出させていただいたのは『スサノオ~神の剣の物語』という作品だったんですけれども、その時はTOKIOの松岡昌宏先輩が主人公で、それがすごく悪い役だったんですよね。その背中を後ろで見ていて「いつか自分もああいう悪役を新感線の舞台で演じてみたいな」と思っていたんです。今回の『バサラオ』で、その想いが叶うというのはなんだかちょっと感慨深いものがあります。
──ヒュウガという役はどんな役で、ご自身としてはどのあたりが見どころだと思っていらっしゃいますか。
自分で言うのもなんですけど、美しさを武器に世界征服を狙う役です(笑)。とんでもない役をいただいたなと思って、今からドキドキしていますけれども。いのうえさんとも昨日、博多の街で食事をしながら今回の芝居の話をしていたんですけどね。本当にド派手な、劇場に観に来てくださったお客様がびっくりしていただけるような演出をしてもらえそうなので、どうにかしてその美しさというものに説得力を持たせていかなきゃな、と思っています(笑)。
──中村さんが演じるカイリの役どころ、そして見どころについてはいかがですか。
役としては、ヒュウガの野望を知略を持ってサポートする参謀、みたいな立場です。もう、とにかく登場人物みんなの欲望が渦巻いているお話なので。カイリは身軽なところがありつつもどこか不穏な空気も漂わせているような、そんなキャラクターになったらいいかなと思っています。見どころとしては……やはり、斗真くんの顔ですね(笑)。だから、この美しさを際立たせるために僕はひどいメイクをしていったほうがいいのか、とか……。
そんな必要はないです、美しくいてください!(笑)
あとは、劇団員の方々がすごく活躍されるのでそこにも注目です。特に粟根まことさんファンは、よだれが止まらなくなると思うので、どうぞお楽しみに!
──生田さん演じるヒュウガは欲望渦巻く悪役ということですが、ご自分と似ているところはあったりしますか。
似ている部分は、顔が美しいことですかね……。(ヒュウ!と中村から茶々が入る)やめろ!(笑) いや、でも本当にとんでもなく悪いヤツなんですよ。劇団☆新感線が描く悪役って、ちょっと触れてはいけないものに触れてしまったような魅力があると思うので、そこをきちんと出せたらなと思っています。
──中村さんは、演じるカイリという役とご自身とで似ている部分はありますか?
「何を考えてるのかわかんない」って、僕は10代後半くらいからずっと言われてきているんです。前回、新感線でやらせてもらった『狐晴明九尾狩』での安倍晴明役も、そういうところもありながら飄々としているところもありましたけど。今回のカイリは物語を運ぶ役割もあったりするので、その中で突っ込んだり、会話したり、戦ったり、いろいろしていきながら、どこか不穏なところを残したいというのはそこにもつながってくる気もしていて。もしかしたら、(中島)かずきさんから見ても僕はよくわかんないヤツなのかもしれないな、と思ったりもしています。
──そして生田さんと中村さんは、プライベートでも親交があるそうですが。
以前、まさに劇団☆新感線の『Vamp Bamboo Burn~ヴァン!バン!バーン!~』で共演してから、関係がグッと近くなりまして。今ではよく一緒にゴルフをしたり、食事に行ったりしています。
──中村さんの俳優としての印象というと。
馬力があって、歌もできるし踊りもできるしお芝居もできるし。できないこと、どこにあるんだろう?ってちょっと腹が立つぐらいですよ(笑)。すべてを自分の中でコントロールすることができる俳優さんなので、共演者としてはとてもとても心強く、信頼しているし尊敬しています。
──では中村さんから見た、生田さんの俳優としての印象とは。
これ、よく会見とかでやるけど褒め合いって恥ずかしいですよね(笑)。
そうなんだよね(笑)。
共演してからこれまでの間で、斗真くんの作ってきたものとか経験を見てきて、すごく線が太くなったというか。って、言語化すると生意気になっちゃいますけど、そう思います。だから真ん中に立ってもらう座長として、とても心強いです。一緒に芝居をする時、プライベートで仲がいい相手だと真面目に芝居していてなんだか恥ずかしくなって笑っちゃいそうになるので、ニヤニヤしないように気をつけます。あと、個人的なことを言うと、自分が主演じゃない舞台をやるのが実は久しぶりなんですよ。だから、すごく甘えようと思っています。
甘えるんですよね、中村倫也って。
そうなんですよ、気づくと甘えられてるでしょ? そこが上手いのよ、中村倫也って(笑)。
実際に僕より2歳年下で、前回共演した時も、お兄ちゃん、お兄ちゃんって感じでしたから。
僕にはリアルに2歳上の兄がいるんです。で、斗真くんには4歳下の弟さんがいるから、お互いに男二人兄弟のところも似ていたりして自然と懐いていました(笑)。
──また、意外にも新感線の舞台では古田新太さんと初共演になるんですよね。
そう、古田さんとは、劇団☆新感線の舞台では本当にご縁がなくて。今回、ようやく念願叶っての共演ということなので、そこもすごく楽しみにしています。古田さんが出ない公演にばかり呼ばれていて「古田がいない新感線はお前に任せた!」みたいな空気になっていたので、自分はもう古田さんと一緒にできることはないのかなとなかば覚悟していたんですけど、このたびようやく叶うことになりました。
──中村さんは、いのうえさん演出の舞台『ロッキー・ホラー・ショー』で古田さんとは共演されていますが、新感線公演では初共演ですね。
古田さんと新感線で初めてご一緒するということは、あの存在感がある稽古場においての、他の劇団員のみなさんの様子を見るのも初めてということで。そのあたりの関係性みたいなものを目撃できるのが楽しみです。だって44年、ずっと一緒にやってきた劇団なわけですから、人と人との物語として観察してみたい、そこも個人的な学びになると思うので。それから、舞台上での古田さん本人はほとんど無の状態だけど、客席から見るとめちゃくちゃ何かを考えさせられるような、あのアウトプットの仕方。若い頃から、あれはどうやっているんだろうと思っていたので、共演者としてそこにも注目しながらやっていきたいなと思っています。
──この斗真さん倫也さんの“TTコンビ”に古田さん、さらにはりょうさん、西野七瀬さん、粟根まことさんという豪華なキャストですが、演出家としていのうえさんはどういうことを期待していらっしゃいますか。
二人に関しては全幅の信頼があるので、あまり心配していません。ただ歌も踊りもある上に、戦国時代ではないですが、鎌倉後期で戦いの場面、もちろんチャンバラがたくさんあるので、そこは体力が必要になってきますけど。
新感線は、異常な量のチャンバラがありますからね!
そう、また今回も多いんだよ。
多そうですねえ!
流れによっては「僕の身体を何だと思ってるんですか!」みたいなことを言う人が出てきますからね。人間の肉体の限界を無視したことになったりすることもあるんで。
カッコイイ、を突き詰めるとどうしても、俳優の肉体に無理がかかるものなんですよ。
そう! それで「そこは20秒で着替えろ!」みたいなことになる(笑)。まあ、そこには気をつけますよ、なんせこの2人はまだ30代ですけど、劇団員たちはほぼ50代ですからね。
──では最後に、博多座公演に向けての意気込みを一言ずついただけますか。
このスケールで、これだけ派手に、しかもきちっとドラマ性のあるものって、なかなか博多座に持ってこられませんので。ぜひこの機会を逃さずに、チケットも高いですがなんとかゲットしていただき、観ていただきたいなと思います。
演劇を観たことがない人、観ないままで一生を終える人って、いっぱいいると思うんです。演劇は、劇場まで来ていただかないことには体感できないジャンルのエンターテイメントなので。でも、この記事をいろいろな媒体で目にしてくださった方は、せっかくのご縁だと思って博多座まで来ていただければと思います。がんばります!
2020年の『偽義経~』の時、博多座のスタッフのみなさんからは本当にたくさんの愛情をいただいたんです。役者の名前が書かれた幟をバーンと立ててくれたり、楽屋の入口に「ようこそ博多座へ!」って書いてくれたり。公演ができなかった時には一緒に悔し泣きをしてくれた姿も、僕の心にすごく残っています。それに、博多座もちょうど25周年なんですよね。そういう記念すべき時にこうしてまた帰ってこれたことが、本当に嬉しい。この素敵な街の中心に、あんなに立派な劇場があるということをさらに多くの方に知っていただき、大勢の方にぜひとも足を運んでいただきたいと思っています。よろしくお願いします!!
東京公演の一般発売は6月23日(日)AM10時スタート!
皆様のご来場をお待ちしております。