/偽義経/【レポート文追加】記者会見開催!

写真左上から
いのうえひでのり(演出) 早乙女友貴 粟根まこと 三宅弘城 山内圭哉 中島かずき(作)
藤原さくら 中山優馬 生田斗真 りょう 橋本さとし

着々と稽古が進行中の1月下旬、都内にて『偽義経冥界歌』の記者会見が行われました。 登壇者は、脚本の中島かずきと演出のいのうえひでのりに加え、出演者からは生田斗真、りょう、中山優馬、藤原さくら、粟根まこと、山内圭哉、早乙女友貴、三宅弘城、橋本さとしという面々です。 会場に『偽義経冥界歌』の劇中音楽が流れる中、中島、いのうえ、そして生田座長仕切りで誂えたお揃いの“鯉口シャツ”を纏ったキャストたちが登場。MCの伊藤さとりさんとのやりとり部分も含めつつ、各自の主なコメントをレポートします。

中島かずき(作)

『スサノオ~神の剣の物語』(02年)で生田くんがまだ高校生の時に出会ってから、いつか彼で新作を書き下ろしたいとずっと思っていました。でも結局のところ、おバカなキャラクターになってしまい、あいすまんと思ってはいますが、でもとても魅力的な役になったと思っております。 昨年の春公演は、自分が想像した以上に光に満ちた作品になっていました。これはキャストのみなさん、特に真ん中に立つ生田斗真くんの魅力による輝きだったと思いますが、本当に明るい、不思議な舞台でしたね。役者が板の上に立つことで、こういう明るさが生まれるんだと改めて実感しました。 今回の東京・博多公演のための台本は、プロデューサーから上演時間を短くするようにと厳命を受けたこともあり、いろいろなところをちょこちょこと切って短くしております。


いのうえひでのり(演出)
 

この作品は去年の春に大阪、金沢、松本で上演したものですが、その前の年まではずっと東京・豊洲のほうでぐるぐる回ることばかりやっていたものですから(笑)、いわゆるプロセニアム、普通の劇場で芝居をするのが3年ぶりくらいで。また中島脚本の、いのうえ歌舞伎の新作という意味では『蒼の乱』(14年)から5年半ぶりになるので、開幕するまでは正直ドキドキしていたんです。でも大阪で初日が開けてみたら、お客さんたちにとても喜んでいただきまして。金沢、松本でも新鮮なリアクションをいただくことができ、大変楽しい公演でした。 だけど気合がすごく入っていたせいか、ちょっと詰め込み過ぎた感もあり、結果的には劇団史上最も立ち回りが多い芝居になってしまいました。こんなはずではなかったんですけどね(笑)。斗真くんを含め、若手を中心にがんばって動いてもらう公演にするつもりで作り始め、それでステージを階段と斜めの八百屋舞台にしたのですが、後半になるとことのほか、うちの劇団員のおじいさんたちも走り回らなければならない展開になりまして。そんな事情も考えながら、今回用にいろいろと削りましたので、昨年より10分くらいは上演時間が短くなる予定です。さらに今回からはミヤケマン(三宅弘城)も参加しますし、前回の公演を踏まえてブラッシュアップしますのでクオリティもぐっと上がると思います。

生田斗真

2019年春公演では大阪、金沢、松本で上演してまいりました『偽義経冥界歌』ですが、本当にたくさんのお客様に喜んでいただけたなという実感を持ったまま、今日を迎えています。今回の令和版『偽義経』は、さらにクオリティを上げた状態でたくさんの方にご覧いただけるのではないかなと思っております。いのうえさんが作りたい劇団☆新感線であり、お客様が観たい劇団☆新感線のお芝居が出来上がっていますので、東京、そして博多に来られるみなさまには本当に楽しみにしていただきたいです。 まさに、いのうえ歌舞伎ならではのケレン味がありますし、ここでしか観られないスペクタクルな物語になっています。いのうえさんもおっしゃっていたようにステージが階段、斜めの舞台、階段、斜めの舞台、というふうになっているんです。ですから、お客様から見ると前に迫ってくるような形になるので、いつも以上に楽しんでいただけるはずですが、われわれのほうは常に斜めの体勢になるわけなんですね。これがかなり大変で、みんなでヒイヒイ言いながら、お互いに力を分け与え合いながらがんばっています。 ちなみに今日みんなで着ている鯉口シャツは、チームワークを上げる意味もありまして同じものを着たいなと思ったんです。それで実は、りょうさんのだんなさまである、BRAHMAN・TOSHI-LOWさまがグッズとして作っていた鯉口シャツがいいなと思い、TOSHI-LOWさんに「パクッていいですか?」と聞いて無事OKをいただき、作らせてもらいました(笑)。

りょう

昨年の公演では各劇場に合わせて立ち回りも少しずつ変えながら、その土地土地の空気を感じながら、新たな発見がありました。ですのできっと今年の公演でも、東京、博多で新しい発見が見つかるのではないかと、楽しみにしております。初めて観てくださる方も、昨年から続いて観てくださる方も、楽しめる作品になっていると思います。 生田さんは、本当に素晴らしい座長だと思います。いつも全体を見ていらして、稽古の時も「りょうさん、ここはこうやったらもっと面白いんじゃないか」とかそういったこともしっかり伝えてくださる、頼りになる座長です。そういう役を演じることが多いとは言われていますが、私は決してバカなんて言いません(笑)、とってもチャーミングなところこそが斗真くんの大きな魅力だと思っております。

中山優馬

昨年の公演はすごく楽しくて、終わってしまうのがさみしくて、もっとやりたい、もっとやりたいという感じでした。それもあって、今年はたくさんの公演数ができることが本当にうれしく、喜んでおります。 新感線には初めて参加させていただいたので、最初は正直ビビっていたんですけど。稽古場に入ると、いのうえさんを筆頭にみなさんでゲラゲラ笑いながら芝居を作っていく姿を見て、とても安心しました。みんなで面白いことを作り出す、アットホームな現場なので、毎日稽古場に行くのが楽しみなんです。斗真くんからも、気づいたところはいろいろアドバイスしていただいています。いい兄貴で、いい座長で、いい先輩です! 今も、ここに出て来る前にシャツを斗真くんがコロコロしてくれたので、こうしてきれいなシャツで出て来ることができました、ありがとうございます(笑)。


藤原さくら
 

初めての舞台で劇団☆新感線に参加させていただけることを、本当に光栄に思います。もともと、劇団☆新感線は大好きでよく観に行っていたんです。今回、出演のお話をいただいた時には、まさかその舞台に自分が?と思いましたが、みなさん本当に優しくて、初舞台の私を本当に温かく見守っていただいております。 私は大陸渡りの歌うたい、静歌という役を演じているのですが、前回の大阪、金沢、松本公演では歌わなかった新しい歌が増えたりして、今回はいろいろと新しい試みもあります。この作品自体、歌が物語の鍵になっているので、精一杯歌わせていただきたいと思っています。

粟根まこと

『偽義経冥界歌』は、いのうえも言っていた通りとても若い力に溢れている作品で、若い力に溢れすぎて立ち回りの手数が非常に多かったのですが。でも今年度版はそれをそぎ落としてシンプルになりましたので、その分、われわれ年かさ組も少しはラクにさせていただけております。 私は昨年に引き続き、正室の北条政子と側室のおかめの方の間で振り回されるという、情けない源頼朝を演じさせていただいています。実を言うと、昨年も今年も私は二手しか立ち回りがなくて。あとはただただ逃げ回るばかりの役ですので、今年も精一杯逃げ回らせていただきたいと思います。

山内圭哉

過去2年にわたって、豊洲のほうでぐるぐるぐるぐる回ってはった劇団☆新感線さんが、去年から久しぶりに通常営業になり懲役が明けたような解放感を持たれて(笑)、しかも大阪での初日開幕でしたからね。ウエルカムムードの中でお客さんにもかなり盛り上がっていただきまして、とてもいいスタートができた公演でした。今年は、シビアなお客さんも多い東京からの再スタートなので、また気を引き締めて稽古し直しているところでございます。 今回は、三宅さんが初めて参加されるんですが。僕らは一回やってることなので、稽古でもついつい置いてけぼりにしがちなんですよね。「なんで、でけへんねん?」みたいな(笑)。あと、三宅さんと僕はコンビの役なんですが、以前“加野屋”という職場でも一緒に働いた仲なので(連続テレビ小説『あさが来た』で山内と三宅は大番頭と中番頭役で出演)、僕がしっかり守っていきたいなと思っております。

早乙女友貴

昨年の公演では、『蒼の乱』以来、5年ぶりの劇団☆新感線でしたのですごく楽しかったのですが、やっぱり新感線って大変だなということも実感しました。新感線史上殺陣が一番多いといのうえさんもおっしゃっていましたが、僕は前回の29公演で7キロくらい体重が落ちまして、本当にガリッガリになってしまって。なんだか僕のほうが干殻火さん(今回インディ高橋が演じている役どころ)みたいでした(笑)。それが今回は68公演あるわけですから、大丈夫かなとも思いながら。でも最後まで楽しみつつ、エネルギーを出していきたいと思います。 斗真座長とは稽古に入る前に二人で殺陣を練習したりしていたこともあって、刀を合わせるのもとてもやりやすいです。本当に頼りになる座長だなと思っています。


三宅弘城
 

今まで新感線でやらせていただいた役はウツケ者とロボットしかなかったんですが、今回は初めて比較的まともな人間の役をやらせていただきます(笑)。武蔵坊弁慶役なので錫杖という長い武器を使った“長モノ”の立ち回りになるんですが、それも初めてですし。初めての赤坂ACTシアター、初めての博多座と、初めて尽くしの公演です。50歳を過ぎてここまで初めてのことに挑めるのもなかなかないと思うので、その幸せを噛みしめながらも経験者ばかりの中で、ひとり苦戦しております。 それにしても、まともな人間のセリフをしゃべるのってこんなに難しいんだなと。これまでにも、まともな役はやってきているんですけど、新感線ではだいぶズレている人の役をいつもやっていましたので、それが日常だったからか、なんだかすごく恥ずかしいんですよ。「おい、行くぞ」って、それくらいのセリフでも恥ずかしくてどういうトーンで言えばいいか分からなくて。ですから、あまり他では観たことのない武蔵坊弁慶になるかとは思いますね(笑)。

橋本さとし

劇団☆新感線をやるにあたって、僕の中でまずスイッチが入るのが何よりもロック魂なんですよ。ここには僕の大好きなものが、いっぱい詰まっているんです。ロック、バカでカッコイイ、笑い、そしてちょっとグッとくるところ。それらの要素が全部詰め込まれているのが、まさにこの『偽義経冥界歌』です。これぞ劇団☆新感線というものを、ぜひ観に来ていただきたいと思います。 また今回は、博多公演があるんですけれども。僕、今までいのうえさんから二回、本気の「死ね!」を言われたことがありまして、そのうちの一回が劇団☆新感線が博多初上陸の時で、出トチリをしてしまったんです。いのうえさんは当時まだ役者としても出ていて、僕を追いかけるシーンだったのに僕が出てこないから延々、舞台の上を「待ていッ」って言いながら走り回ることになってしまいまして。終演後、形相の変わったいのうえさんが僕の楽屋にバーンと入ってきて「おまえ、なんで出てこなかったんだよ」と言うので、僕は「スイマセン、劇場のケータリングの女の子としゃべってました!」と答えたら、「死ねェ~ッ!」と今まで聞いたこともないようなハイトーンボイスで本気の「死ね!」をいただいてしまいました。そんな思い出のある博多で今度こそ僕はリベンジしたいので、絶対に出トチリはせずに成長した姿をいのうえさんに見せたいなと思っています。 ちなみに二回目の本気の「死ね!」は、稽古前に橋本じゅんさんとウォーミングアップをしようと、関節技を決め合うスパーリングをやっていた時。じゅんさんにヒールホールドを決められて、でもギブアップするのは悔しいから我慢していたら、ミチッて音がして。その直後に僕が足を引きずりながら稽古場に入っていったら、いのうえさんに「おまえ、何してたんだよ」と聞かれたので「スイマセン、関節技を決め合ってました」と言ったら「死ねェ~ッ」って言われました(笑)。 まあ、ともかく。今回もこうしてみなさんと楽しく健康第一で、最高の舞台を東京、博多のみなさんにお届けしたいと思います!

そして会見の最後はやはり、生田座長の言葉で締めくくっていただきました。

生田 「今、ご覧になっていてもわかるように、記者さんを置いてけぼりにしてこっち側だけで盛り上がってしまうという、本当にアットホームな現場です(笑)。39年前に結成された劇団なんですが、僕ら客演のメンバーが入っても昔からずっと一緒にやっていたような空気を作ってくれる、本当に温かいみなさんばかりなので感謝しています。 東京公演そして博多公演、さとしさんがおっしゃっていたように健康第一でがんばりたいです。最後まで、どうかよろしくお願いします!」

さらにこの会見後には、生田、りょう、中山、藤原の4名による囲み会見も行われたので、そのやりとりもここで少しだけご紹介。

――――久しぶりの再会、ということになるんですか。

生田 「とはいえ、8カ月前なので意外とそんなにたってないかなと。稽古も“思い出し稽古”といって、今までやっていたことを思い出しながらやっているんですが、意外とみんなちゃんと覚えているので、身体も頭も冴えてるなという感じです。ここ右だっけ、左だっけ?みたいなことはありますけど、何となく身体に染み込んでいるものですね。」

中山 「いや、でもなかなか大変ですよ。僕は事前にシミュレーションをしてから稽古場に入ったりしているんですけど、いのうえさんの演出が今回から変わるところもありますしね。 りょう ちょっとずつ、変わりますからね。逆に、このちょっと変わるというのが難しいんです、以前の動きをついしちゃって「あ、違った!」ってなるので。でも、確実に面白くなっていると思います。」

生田 「立ち回りも観やすくなっているし、物語の流れもいい具合に繋がっているし。」

藤原 「新しい歌も増えたりしていますし。」

――――舞台で歌うというのは、藤原さんとしてはいかがでしたか。

藤原 「とても楽しかったです。歌によって物語がどんどん次のステージに進んでいくという感じになるので、今回も気を引き締めて歌わせていただいています。」

――――頼りになる先輩も多そうですし。

藤原 「みなさん本当に優しくしてくださいます。特に斗真さんは、自分の殺陣もあるのに私のアクションのところの居残り稽古にもいつも付き合ってくださって。本当に優しい座長です。」

――――生田さんは新感線の準劇団員と呼ばれているそうですが。

生田 「何回目から準劇団員になれるのかは、よく分からないんですけど(笑)。僕の場合は準劇団員とも言われますけど、親戚の子供がちょっと大きくなって帰ってきたみたいだと言われたりもするので、それもありがたいなと思っています。」

――――中山さんは今回初めて新感線と出会ったわけですが、いかがでしたか。

中山 「とにかく稽古場の雰囲気が明るいんですよ。それに最初はすごくビックリしました。歴史のある劇団なので緊張感が漂う現場なのかと覚悟していたら、緊張感はもちろんあるんですけど、本当にみんなが楽しそうに作っているので、それに感銘を受けたというか。」

――――生田さんとはこの作品が初共演でしたが、お兄さんぽいことはやってもらいましたか。

中山 「昨年は大阪、金沢、松本公演でしたので、各地でよく食事をご一緒させていただいたりしていました。もう、斗真くんはほとんど完璧なんです。ちょっとムカつくくらいに(笑)。」

――――何点くらいですか。

中山 「99点です。マイナス1点は、舞台用のお化粧が下手なので。」

一同 「(笑)。」

中山 「毎日多少、顔が違うんですよ。」

生田 「優馬は上手だからね。」

りょう 「そうそう、本当に上手よね。」

生田 「やっぱり慣れているからかな。優馬は料理も好きだし、手先が器用なんだよね。」

――――今回の稽古ではお弁当は持参されているんですか。

中山 「はい、持参はしているんですけど。隠れながら食べています。」

りょう 「えっ、私、見たことないです。」

生田 「この間、男子更衣室で壁に向かっておにぎりを食べていたね。」

藤原 「ええ?」

りょう 「更衣室で食べているの?」

中山 「いや、なんだかちょっと恥ずかしくなっちゃって。」

生田 「あいつ、自分で作ってきたぜみたいな空気がイヤなの?」

中山 「それはいいんですけど、それを人前で食べているということが無性に恥ずかしくなるんです。」

――――みなさんの分を作ったりはしないんですか。

中山 「いやいや、そんな僕なんかが。」

生田 「お願いしたいんですけどね。」

りょう 「したいよねえ。」

――――あと、ここが見せどころというのはどこでしょう。

生田 「優馬が歌う場面も、ちょっと増えたりするんだよね。」

中山 「はい。兄上と一緒に歌わせていただくところが。」

生田 「そうそう、あったりします。」

――――では最後に改めてメッセージをいただけますか。

生田 「東京公演と博多公演、長い公演になるんですけれども、お客様ひとりひとりのお力をお借りしながらがんばりたいと思っております。最後まで応援のほど、よろしくお願いします!」

いかにもカンパニーの仲の良さ、稽古場の温かい雰囲気がよく伝わる、笑い声に満ちた会見となりました。 ブラッシュアップされた、令和版『偽義経冥界歌』の開幕まで、あとわずか。冥界の扉が開く、その時を楽しみにお待ちください!

TEXT:田中里津子 撮影:田中亜紀

【公演情報】
東京・2020年2月15日(土)~3月24日(火)TBS赤坂ACTシアター
福岡・2020年4月4日(土)~28日(火)博多座
公演情報詳細は公式サイトにて!

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