/けむり/ヴィジュアル撮影 レポート 早乙女太一篇

劇団☆新感線には、この『けむりの軍団』でなんと6回目の出演となる、もはや誰もが認める“準劇団員”の早乙女太一さん。今回の飛沢莉左衛門役は剣の腕は確かながらも“口下手”という、ひとひねりある役柄。このキャラクター設定を早乙女さんがどう演じるか、早くも興味津々です。ヴィジュアル撮影用に用意された衣裳は、竹菱の柄が入った麻袴に袖なしの羽織。これが様々な彩度の青色で統一されていて、凛々しさも倍増! 黒髪のロングヘアを後ろで紐でくくるスタイルも、お似合いです。

撮影開始と同時に、早速ブロワーを使って後ろから髪を吹き上げたいということになり、早乙女さんの背後にはヘアメイク担当の宮内さんがスタンバイ。緑と青のフィルムを装着したライティングも、ちょっと風変わりな面白い効果を生み出しそうです。髪が緑のライトに照らされている様子をモニターを通して見てみると、自分の目で見た時よりも妖艶な雰囲気が増幅しているようにも見えます。

アートディレクターの河野真一さんが「刀を抜いて、構えてみて」と声をかけると、「はい!」と答えてスッと刀を構える早乙女さん。続いてカメラマンの相澤心也さんの指示で、抜いた刀を顔の前で光に反射させることに。そこに赤い色も加えたいということで、赤いフィルムの付いたライトも追加で用意されました。「正面の顔のほうが、このキャラクターの不器用さが出ていいかもね」という河野さんの意見に合わせ、しばらく正面を向いた状態でシャッターが多く切られていきます。

「表情は基本、クールで。だんだん口元に表情をつけてくれる? まずは怒りを表現してみて」と言われた早乙女さん。すぐさま眉間に皺を入れ、歯を食いしばったかと思うと、レンズに向かって鋭い目線を送ります。「よし! すげー、カッコイイ!」と、シャッターを押しながらもなんだかとてもうれしそうな相澤さん。「その角度いい! 風、もっとください!!」という相澤さんの注文には、早乙女さんの背後からブロワーが2台がかりで風を噴射。そのコンビネーションがこれまた絶妙で、いい塩梅に黒髪が空中に舞い、ドラマティックなショットがどんどん取れている模様です。

セットチェンジの合間には、屈伸運動をしてみたり、刀を振り回してみたり、肩にかついだりする早乙女さん。モニターを確認する際には周囲のスタッフと楽しげに談笑したりもしていて、さすが準劇団員、すっかりリラックスした雰囲気が漂っています。

さらに、この場にはいない須賀健太さんと戦っているという仮の設定で、スタッフが構える手前の刀と早乙女さんの刀をクロスさせながらのポーズを撮ることに。刀に当たる光の反射具合、それが顔にかかる位置など、いろいろと試行錯誤をしながら丁寧に微調整を繰り返します。河野さんが自ら刀を持ち、須賀さん役として刀を重ねて細かく指示をしていると、スタッフからは「戦うデザイナーだね!」との声が。フフッと微笑む早乙女さんですが、河野さんから「じゃ、次は般若のような顔で」とのリクエストが入ると、次の瞬間にはギラッと強い目力を発揮、口を開いた迫力ある表情に豹変。「いいじゃん、いいじゃん!」「すごいね、めちゃめちゃカッコイイぜ!!」と、スタッフたちからも称賛の反応が飛び交います。

早乙女さんにも撮影終了後、今回の作品に対する印象や意気込みなどを語っていただきました。

――新感線には6回目の出演になるわけですが、今回の『けむりの軍団』への出演のお話を聞いた時は、どう思われましたか。

まず古田(新太)さんと共演できるということを聞き、そのあとで脚本は倉持(裕)さんだと知ったんですが、僕は(中島)かずきさん以外の脚本で新感線に出るのはこれが初めてなんですよね。きっと、いつも味わっている感じとはちょっと違う新感線になるんじゃないかな、と思いました。でもとにかく、やっと古田さんと舞台で初めて共演できるので。僕にとって今回はもう、それがすべてです(笑)。

――以前から、ぜひご一緒したいんだとおっしゃっていましたよね。

はい。『髑髏城の七人』Season月の公演中の時だったかな、一緒に飲んだ時にも古田さんに「ちょっともう、いつ死んじゃうかわからないんだから(笑)、早めにお願いしますよ!」って頼んではいたんです。だってそろそろ本当に急がないと、古田さんが動けなくなっちゃってからではイヤだから、動けるうちに戦わせてください!と(笑)。でも、それがまさかこんなにすぐ叶うとは思っていなかったですけどね。

――そして今回は、これまで新感線で演じて来られたキャラクターとは一味違う印象の役柄のようですが、台本を読まれてどんな印象を持たれましたか。

一幕は、比較的ラクそうだなと思いました(笑)。新感線の台本を読む時は他の舞台のものとは違って、いつキツい場面が出てくるかを気にしながら読むので、すごくドキドキするんですよ。でも今回、一幕は意外と僕自身が戦う場面は少ないみたいだったので。キャラクター的には、それほどひねくれていないというか。今までは新感線に出る時って謎な部分が多い人物だったりしていたんですが、今回はまっすぐな人のようだということはすごく感じましたね。

――倉持さんの脚本ならではの、会話の妙もありそうですね。

そうですね。そういう意味では、うまくできなくていろいろ怒られそうだな、とも思いました。間が難しそうな気もするので、そこに関してもいっぱい教えてもらおうと思っています。

――池田成志さんと『髑髏城の七人』Season鳥に続いて再び共演できることも、楽しみのひとつかと思いますが。

はい、それも今回ものすごく大きいポイントです。もともと成志さんも古田さんも大好きだったし。好きな人が大勢いるのは、やっぱりうれしいですね。『鳥髑髏』の時もいろいろなことを教えてもらったり、しょっちゅう一緒に遊んでもらったりしていたので。

――今回は共演者に『髑髏城~』経験者が多いんですよね。須賀健太さんとも共演されていますし。

はい、『月髑髏』で同じチームでした。でも、それに関しては別にどうでもいいです(笑)。

――それはつまり、ふだんから仲がいいということですね(笑)。

ケンちゃんは、今回もまたちょっといじめてやろうと思っているので。いつも、ホントうるさいんですよ(笑)。

――『花髑髏』に出ていた清野菜名さんとは。

ご一緒するのは、今回が初めてです。とにかく動けて、エネルギーがすごい方だなと。『髑髏城~』はもちろん、映像作品でも拝見していますが、光をパーン!と放っているようなエネルギッシュな雰囲気があって。声もいいし、とてもパワーを感じます。僕がやってきたアクションとは毛色が違って、清野さんはボディアクションがすごいですよね、僕は足がまったく上にあがらないほうなので(笑)。まあ、今回はそっち系のアクションで戦うことはなさそうだけど、機会があればいろいろ教えてもらいたいです。

――これだけ何度も参加されていて、新感線の劇団としての魅力はどう映っていますか。

新感線の舞台といっても、作品によって毎回違うっちゃ違うんです。新しく参加する人がいたりすると、雰囲気が結構変わりますからね。特に、前回の『月髑髏』の時は初めて参加する方が多かったから、僕としては全然、新感線の舞台に出ている感覚ではなかったし。だけど、むしろ僕は古田さんが出ていない作品にしか参加していなかったから、今回ようやく新感線の軸である公演に参加できるんだという思いもあります。

――古田さんに感じている、役者としての魅力はどういう部分ですか。

そんな、おそれ多くて一言では言えないですけど。とにかく、殺陣の見せ方がすごくカッコイイ。今回やっと一緒に殺陣ができるのが本当にうれしいんですけど、そもそも僕、古田さんの殺陣の見せ方のマネをしていましたから。あの柔らかさと、力強さと、抜き加減。そして決めるところは決める、というところがカッコイイんです。それは舞台でも映像でもそうで、僕もずいぶん勉強させてもらっていました。

――では今回、直接戦えることで、また新たに教わることがあるかもしれないですね。

いや、今回はぜひボコボコにしたいなと思っているんですよ(笑)。

――ボコボコにしたいんですか?(笑)

今まで教えてもらった蓄積がこっちにはいっぱいあるから、それをすべてぶつける覚悟です。古田さんの周囲を僕が必死で動きながら、ボコボコにします(笑)。

――その古田さんが芸能生活35周年だそうなので、お祝いコメントをいただけますか。

35周年、おめでとうございます。僕が生まれる前からやられていたのかと思うと、感慨深いです(笑)。僕は人生で初めて感動した舞台が新感線でした。その最初に感動をもらった新感線の舞台で、今回やっと古田さんと共演ができることを、ものすごくうれしく思っております。これからも、元気でいてください!

――39興行にからめて、あなたの“サンキュー”を教えてください。

今回、ホントこればっかりになっちゃうんですが(笑)、古田さんにサンキューです。だって僕、もしかしたら一生共演はないのかな、嫌われてるのかなと思っていたくらいだったので。まさか共演NGなのかな、とまで思ったりしていましたからね(笑)。

――では、お客様へもメッセージをいただけますか。

やっと、やっとです。僕は17歳で初めて新感線に出させていただいて、それから10年が経ち、今回ようやく古田さんと同じ作品に出られることになりました。存分に戦いたいなと思いますし、たぶん今までとはまた違う経験ができそうですし、とにかくがんばります! ぜひ観に来てください、よろしくお願いします。

TEXT:田中里津子 撮影:田中亜紀

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